サンタレンはアマゾン本流の中ほどに位置する港町。大支流タパジョス河との合流地点にも当たる。港には特徴ある市が建ち並び、にぎやか。
大都会の人と比べて、ここの人たちは、なぜか顔つきが穏やかに見える。しかし、開高健が訪れた当時の美しさや大らかさは既に無い。

乾期のため、港には桟橋よりも砂地の浜に直に乗り上げ停泊する船が多い。船底が平らに出来ているため、乗り上げても倒れない。これでアマゾンのどこへでも行く。
船一そう貸し出しているものもある。看板が掲げてあるので、直それと分かる。値段は交渉しだい。日本人だと分かると、吹っかけられる恐れがあるので、現地のガイドに任せ、隠れていた方がいい。貸し出し値段はかなり安い。

調査船

私達の借りた船。これで、これから2泊3日の調査に出かけた。 船頭とその息子、私と通訳の4人でゆったりした船旅である。最高の牛肉と野菜果物、飲料、菓子等、食料を積んでいざ出発。目指すは、リオアルアン。
この時は、どんなコリドラスに会えるかとワクワクしている。

港市場

左写真。サンタレンの店は、折りたたみ式になっている。閉店時には柱をはずして屋根を下ろし、荷物の保管庫にはやがわりする。

右写真は、市場のストリート。木道の下は河である。
穀類、野菜、果物、もちろん魚、食料品の全てが売っている。

魚市場

魚屋の商品。 ピラニア、ペーシュカショーロ、シクリッド、カリクチィスなど多彩。
1m程の高さにすえられた木箱に魚を入れ、販売している。

カリクティス

売られていたカリクティス・リトラレ
最初に見たのはサンパウロであったが、こんなところにも多数いた。食用。 美味いらしいが、まだ食べたことが無い。分布はかなり広いようだ。

アロワナ、ジャウーぺドラ、ピラニア、レポリナス等多彩。とにかく食用。

レポリナス、クルビーナ(淡水イシモチ)、ピメロディア類、シャベルノーズ、マパラ?、淡水イワシなど、これも多彩。とことん食用。多くは、から揚げにして食べるようだ。

珍しくエイも売っていた。こんなもんまで食べてしまうのか。さすがブラジル。

こちらはちゃんとした、屋根のある魚屋。タイルで区切られた、2m程のブースになっていて、そこで得意の種類を販売している。これはナマズ屋ともいえる魚屋さん。売っているのはタイガーシャベルノーズキャット。(左)よく売られているサイズ。
右は別種のタイガーシャベルノーズキャット。フィレオッチと呼ばれている種類。 こちらは派手柄で美しい。

川渡る蝶

サンタレンからリオアルアンへ向かう途中、見上げれば手の届きそうなところに美しいアゲハチョウが舞っている。向かい風の中を見えない対岸から次々と飛来する。
そのたくましさとけなげさに、思わずシャッターを切った。

2匹で飛んで来るものもいる。水面上50cmを飛ぶものもいれば、5mを飛ぶものもいる。
まるで波に飲み込まれそうに成りながら、飛ぶその体のどこに、そんなエネルギーがひそんでいるのだろうか。これからまだ数キロも強風に押し流されながら飛ばなければならないと言うのに。

アルアンへ

船の屋根のデッキでのんびりしながら、今までの、そしてこれからの調査を思う。
アマゾン本流の対岸はまだ見えない。すでにもう何時間も走っていると言うのに。 アマゾンの川岸に立ち見えないはずの岸が遠くに見えるのは、対岸ではない。 それは河にいくつも重なりあい存在する中州の岸である。

ようやく一つの浜に着いた。ここが対岸か、リオアルアンの河口かは分からない。
砂は真っ白。まるでさんご礁の浜だ。熱帯地域特有の赤い土(ラットソル)をめくれば、下はこんな純白な白砂である。
この浜で、また新しいアマゾンの現実を見た。

プラチナメダカ

上記の浜で採集されたメダカ(カダヤシ)とカラシン、アピスト。
この浜にいたメダカは、全てプラチナであった。そして水深1.5m~2m程の水底に落ちていた流木の下には、必ず1~2尾のアピストグラムマとエビが採集された。これらは共生しているのか?だとしたら大変興味深い発見だと言える。

エビ

アピストと共に採集されたエビ。なぜかアピストと共に、流木の下から現れた。
周囲には砂や水中に沈んだ木の根が多少あるだけで、隠れるものはほとんど無い。 アピストの生息環境と言えば、生い茂った水草や枯葉などの堆積物がある小川と相場が決まっているようである。
しかしこの場所は周囲に水草は全く無く、水もあくまで透明。水深もそこそこあり、アピストがいそうには思えないが、実際はこんなところにも生息しているのである。いた種類は、メインケニーのようであった。

リオアルアン

リオアルアン本流の河岸に見られる植物相。
乾期なので川岸が見えているが、雨期には恐らく水中林に移行するのであろう。 ヤシ科の植物が川岸に生えているのが特徴的か。
一般的にアマゾンの川岸は急に深くなり、浜が作られることは多くない。 それは、極端な雨期と乾期の水位差によるものではないだろうか。

アルアンの滝

旅の終点。
旅の終点は急にやってくる。滝がその行く手を阻むからである。 アマゾンの滝はいわゆる日本の滝ではない。段差の大きな荒瀬と言ったところか。
数多くの滝がアマゾンには存在し、溯上を阻んでいる。アマゾンが平らだなどと考えたら、大間違いである。 この場所は、1994年に訪れたものだが、その後ドイツ人が採集に入り、1999年だったか、雑誌DATZに同様の写真が掲載された。

高巻きして滝を見る。轟音を立てて流れる水だが、この中州で観光客が遊んでいた。命知らずか。 この上流で、コリドラス・アルアが採集できるのである。もちろん筆者も採集し飼育していた。 その5年後に商業輸入で入荷したのである。 滝は時として生物の移動を妨げ、バリアとしての働きをするが、この滝がその役目をしているかどうかは、確かめられなかった。 滝の周辺には、数多くのディクロッサス・マキュラータスがいた。その当時は高価で目ずらしかったが、ここにはいくらでも生息していた。

インディオ

滝の下流にはインディオの村があった。川魚(熱帯魚)を食べ、キャッサバを作り、狩猟に行く。そこにも間違いなく家族があり、生活があった。彼らの家は植物で出来ていたが、教会はコンクリートで出来ていた。宗教は神か悪魔か。

ハタオリドリ

滝の上流にあった大木に、多くの鳥が巣をかけていた。
袋状になった巣が、いくつも枝からぶら下がっている。アフリカのハタオリドリの巣に似ているが、類縁関係は知らない。

川をさか上ると、いくつかの小川に行き当たる。いかにも魚がいそうだが、いる種類は限られている。
カラシンがほとんど。カダヤシやアピストがいる事もあるが、コリドラスはまずいない。

コリドラス sp. アルア

採集されたコリドラス sp. アルア。未記載種。発表はサボっているが、初記録。川の名前を付けたのなら、アルアンが正しいが、日本にはアルアと言う名前で輸入されたらしい。グリーンがかった褐色は色彩的に珍しい。

採集直後のコリドラス sp. アルア。不思議な色彩をかもし出す。体型的には特徴は無いが、色彩が特徴的。ファンも多い。

サンタレン近郊の川にかかる木道。アマゾンの橋は全て木製。腐れば架けなおす。

水草

左写真。種類は不明。サジタリアのような水草に引っかかり生育する水草。 そこだけ明るく輝いて見えた。

右写真。木道脇の植生。色々な植物が生い茂るが、全てが水陸両用である。

ナマケモノ

川岸の水草の中を採集中、ふと見上げれば、木の上からミツユビナマケモノがこちらを見ていた。
自然の中に浸かっていると、思わぬところから見られていることがある。それにしてもナマケモノから観察されていたとは・・・。 ちょっと毛深いが、森を知り尽くしているという風貌。